バンクーバーオリンピック フィギュアスケート女子シングルSP (キムヨナ選手と浅田真央選手の得点差は何だったのか?)

浅田真央選手!会心の演技でSP2位!
本当にすばらしかった。トリプルアクセルも決めて、会場も盛り上がっていた!
1位になったキム選手よりも会場は沸かせていたでしょう。

さて、今回のSPの結果、1位のキムヨナ選手と浅田真央選手の点数の差が約5Pついたことについて、ネット上などで色々と物議をかもしています。

私の個人的な感想で言えば、キム選手の演技を見た後、「演技の内容は浅田選手のほうが上回った」と素人ながら素直に思いました。
もちろんキム選手の演技もすばらしかったのですが、会場の雰囲気は、断然浅田選手が滑ったときの方が良く感じたのもあると思います。
まあ、あとは「私が日本人だから」というのも大きいでしょうが(笑)

ただ、そう思いつつも、「点数は浅田選手を上回るだろう」と考えていました。やはり採点競技ですから、審判の主観が入り込む余地がある以上、現時点で世界最高といわれる選手に、出来栄え以上の点がある程度つくことは当然のことと思っていたからです。(例えが適切か分かりませんが、シンクロナイズドスイミングで当分ロシアが世界1から陥落することはないだろうと思われるように)もちろんそのことに納得はしませんが、そういうものでしょうという心構えがあったということです。

ですから、浅田選手の73.78をわずかに上回る、75ポイント前半ぐらい、と予想してました。しかし、実際についた点数は78.50という異次元とも言える数字で、これには正直驚きました。もちろん私の予想などというのは素人の直感であり、どうしてそのような差になったかのは、もう少しきちんと採点を見る必要があります。

バンクーバー五輪の公式サイトで詳細な採点結果が出ていますのでそれを見てみました。

まず、オリンピックのフィギュア女子SPで史上初となるトリプルアクセルを決めた選手が、どうして大差をつけられ2位に甘んじるのか?多くの人が疑問に思うと思います。
そこで冒頭のコンビネーションジャンプの得点を見てみると

キム選手 Triple Lutz + Triple Toeloop 基礎点10.00 / GOE2.00 / 合計12.00点
浅田選手 Triple Axel + Double Toeloop 基礎点9.50 / GOE0.60 / 合計10.10点

キム選手のトリプルルッツは基礎点6.0、トリプルトーループは基礎点4.0で合計10点。
一方、浅田選手のトリプルアクセルは基礎点8.2と高いですが、合わせるダブルトーループの基礎点が1.3と低いため合計9.5になっています。

つまりトリプルアクセル自体は得点の高いジャンプですが、コンビ全体で見るとキム選手の方が基礎点が高い。
そして演技全体を見ても基礎点の差はこの0.5だけであり、キム選手34.9に対して浅田選手34.4となっています。

さらに、GOEと呼ばれる加点(減点の場合も)があり、キム選手はコンビのジャンプに対して2.0の加点、浅田選手は0.6にとどまり、このジャンプだけで、1.9ポイントの差がついた結果です。

色々と思うところはあります。世界で女子では指を数えるほどしか跳べる人のいない(現状では試合でやってるのは浅田選手だけ?)トリプルアクセルの評価があまりに低いのではないか。GOEという主観で決める加点の根拠を、もう少し明確に出来ないのか、などなど。

そもそも、個人的には

Triple Lutz + Triple Toeloop 基礎点10.00
Triple Axel + Double Toeloop 基礎点9.50

この点数のつき方が、ちょっとバランスを欠いているように思うわけですが、私は素人なので、実際にフィギュアをされていた方とか、詳しい方に言わせれば、トリプルルッツ、トリプルトーループの連続ジャンプの方が、トリプルアクセルダブルループより難しいというのが妥当なのかも知れず、そればかりは何とも言えないのですが・・。
少なくともこの下のジャンプを試合で跳べるのは、浅田選手だけだと勝手に思っていますが、ひょっとすると上のジャンプを跳べるのもキム選手だけなのかもしれませんね・・。

つまり、この結果だけをみますと、「浅田選手はキム選手より難易度の低いジャンプを飛び、出来栄えも大してよくなかった」ということになります。逆に言えば「キム選手は浅田選手よりも難しいジャンプを加点が着くぐらい完璧に跳んだ」ということです。

私の中で、トリプルアクセルが最高に難しいジャンプだ、というイメージがあり、それをミス無く跳べば、世界一間違い無し!というイメージがあったのは確かで、これはもちろん大げさな話で、ジャンプ以外の要素ももちろん大事なのは分かりますが、浅田選手はジャンプ以外の要素も一流と呼べる実力があると思っていたので、アクセル跳べば世界一と思っていたのです。

しかしそうではなかった。キム選手の方が難しいジャンプを跳んでいた。しかも上手に。それが審判のジャッジだった。だからこの点数にはとりあえず納得するしかない。

キム選手のコンビネーションの2回目、軸がずれてただろ?とか回転不足じゃ?とか思っても、プロの自分より知識も経験もある、専門家たる審判が下した判断だから仕方が無い。
(ましてや審判買収されてる!なんていうのはもう・・・。)

しかし、そうではあるのだが、男子のプルシェンコ選手が言っていたことがよくわかる結果だと思う。今の採点基準では、高度な技に挑戦することが、そのリスクに対して正しく評価されていないと感じる。であれば、4回転を捨て、3回点半を捨てることが、好結果を出す近道となる。

浅田選手も世界一を狙うなら、トリプルアクセルのあとさらに3回転を跳ぶ方法もあると思うが、確実なのはトリプルアクセルを捨てて、コンビの2回目で3回転を跳ぶことなんだろう。そうして誰も(少なくともジャンプでたくさん回るという方向での)進歩を目指さなくなる。プルシェンコ選手の言うとおり、技術的には停滞することになるのでは無いかと思う。



さて、キム選手と浅田選手、基礎点は略同じ演技ではありますが、前述のとおり、審判の主観によるGOEでキム選手は9.8点を稼ぎ、それに対して浅田選手が7.1点にとどまったため、技術点で3.2ポイントの差がつきました。技術的にキム選手のほうが上だというジャッジです。少なくとも現行の採点システム、採点基準ではそうだということで、受け入れますが、モヤモヤ・・。

ちょっと前までのイメージでは表現力ではキム選手(私はそうは思わないのですが・・)、技術の浅田選手という感じだったのですが、いまや技術も表現もキム選手が上、ということになっているんですね。んんん。

今述べた技術点のほかに、フィギュアの点数として、演技構成点という点数があるのですが、これでさらに1.52ポイント差がついてしまいました。合計で4.72ポイント差になります。この演技構成点というのはいわゆる「表現力」というやつを表しているのでしょうか。素人なのでよく分かりませんが、これもなかなか理解しずらい採点方法です。

そもそも採点項目が

  • スケート技術(Skating Skills, 略記号: SS)
  • 要素のつなぎ(Linking Footwork / Movement, 略記号: MO)
  • 実行力(Performance, 略記号: PF)
  • 振り付け(Choreography, 略記号: CH)
  • 曲の解釈/タイミング(Interpretation / Timing, 略記号: IT)

とかなり抽象的に感じます。
特に「曲の解釈」って・・。選手が曲を解釈しているかどうか、審査員が判断するんでしょうか?となると、審査員は完璧にその曲を解釈していて、そのうえで選手の演技をみて「うーんあまり理解していない!」とか「良くこの曲を解釈しているわ〜!」とかやるんでしょうか。えらく抽象的であり、こういうもので点数に差がつくのは、
「スポーツ」としてみた場合なかなか納得しがたい部分もあります。

最後に、全体的にゆったりとした、余裕のある構成に見えたキム選手に対して、浅田選手は息つく暇も無いといった感じで、非常にタイトな構成だったと思いますが、そういう全体の難易度的なものは評価してもらえないんでしょうかね。テレビでキム選手本人が「指を鳴らすシーンで一休み」みたいなことおっしゃってましたが、そういうのって見てもらえないのかなあ。


さてさて、色々と書いてしまいましたが、まだまだフリーでの逆転に期待大!です。
見られるかどうか分かりませんが・・・

浅田選手、気負わず、最高の演技が出来るように祈っています!!