フィギュアスケート採点論争

バンクーバーオリンピックの女子フィギュアをみて、私も町に溢れる「にわかフィギュア評論家」となり、前回、前々回と感想をつづったわけですが、その後色々と思うこともあり、最後のまとめをしておこうと思います。いきなりフィギュアのことを書いたのですが、これで、このブログも今までの感じに戻ると思います。

  • 一つ目、なぜ、キムヨナ選手の加点に対して「おかしい」とは明言しないか。

これは、単純に「わからない」からです。例えば、キム選手の冒頭のコンビネーションにはいつも、GOE+2がついていますが、これが「つきすぎ」と断じる根拠を持ち合わせていません。
GOEには加点基準があり、http://www.geocities.co.jp/Athlete-Athene/9074/index.htmlから引用させていただくと以下のとおりですが、

まずプラス面について、各6項目のうち1〜2項目満たしていれば+1、3〜4項目なら+2、5〜6項目なら+3と評価し、続いて、エラーがあれば、そこから減じていきます。

(1) [入り方の評価] 予期せぬ入り方、独創的な入り方、難しい入り方をしている
(2) [入り方の評価] 明確で評価に値するステップやスケーティング動作から直ちに跳んでいる
(3) [空中の評価] 空中で変形ポジションをとっている、または回転の開始を遅らせている
(4) [空中の評価] 高さや飛距離が素晴らしい
(5) [出方の評価] 着氷時に手足がよく伸びている、または独創的な出方をしている
(6) [全体の評価] 入りと出の流れ(加えてコンビネーション・シークエンスではジャンプ間の流れ)が優れている

キム選手のコンビネーションに対して、これを3〜4項目満たしていると判断しているジャッジが多数いるということになると思います。しかし、どれが当てはまって、どれが当てはまらないか、私には良く分かりません。

仮に、GOEをつける際に、該当する項目も同時に発表されるとか、そういうことがあれば、それを見て妥当か否か、もう少し踏み込んだ発言も出来るかもしれませんが、それも発表されないのでなんとも言えない、というのが実際です。

コメントいただいた方に返した内容と同じですが、例えば、私の好きな野球に例えますと、

中日ドラゴンズの井端選手がさばいたショートゴロを見て、凡人は「普通のプレー」だと感じたとしても、見る人が見れば、
「今のは、ショートバウンドであるうえに、捕球直前にバウンドが変わっているんですよ!しかも捕球後の送球が早く、ファーストにやさしい位置に投げてるんです。分かりにくいとは思いますが、これはなかなか簡単なことではありませんよ。」

というようなこともあると思いますので。

とりあえず、「専門家の判断は正しい」という前提でブログは書かせていただきました。

『なにいい子ぶってんだ、どう考えても裏取引あるだろ』とのご意見もあるやもしれませんが、そういうことで、ご了承いただきたいと思います。

(もちろん、何度か書いていますが、採点競技において現時点でトップといわれる選手に対して採点が甘くなる傾向があるとは思いますし、今回もその傾向はあると感じてはおります。これに関しては「そういうものだ」とあきらめている部分もあります。)

その上で、基準があるとはいえ、主観で決まるGOEによって、基礎点が29%もアップ(キムヨナ選手のFSの技術点60.9→78.3)するというのは、トリプルアクセルの基礎点が他の3回転ジャンプに比べて2.2点〜4.2点ほどしか高くない現状では、とてもバランスが悪い。

結果として、現行の採点システムは透明性がなく、検証すら満足に出来ない、高難度の技に挑戦する選手に対して不利に働いている、という感想をもったことから、

採点を検証できるようにジャッジの匿名制をなくし、またGOE加点比率の縮小、加点減点根拠の明確化、明示化、基礎点の見直し等が必要なのではないかという趣旨で書かせてもらいました。

  • 二つ目、おかしなところの訂正

前回の記事で

トリプルルッツトリプルアクセルの基礎点の差は2.2点。ルッツを飛べる人が2.2基礎点を上げるために3Aに挑戦するのと、ルッツの完成度を高めてGOEで2点とるのとどっちが近道か。

今アクセルを跳べる人が何人いるか考えれば、後者なのではないか。と思う。

もちろん素人考えなので、誤解があるかもしれないが。

それを前提にするなら、浅田選手が目指すべきものはもちろん4回転ジャンプなどではない。

仮に、トリプルアクセルを、4回転で一番基礎点が低い4回転トーループにレベルアップできたとして、基礎点の上積みはわずか1.6点(8.2→9.8)。

これはいかにも効率が悪い。であればキム選手に比べてまだまだもらえていない、既存のジャンプのGOEを高める方が効率が良い。そういう意味での伸びしろは浅田選手のほうがあるといえるのではないだろうか。

なんてことを書きましたが、やはりちょっとおかしいところがありました。

ルッツを跳べる人が3Aを習得したら、ルッツを3Aに置き換えるわけは無いんで、例えばルッツをそのまま残し、2Aを3Aに置き換えた場合、基礎点は4.7点上がります(3.5→8.2)。ですから「基礎点2.2点のために3A挑戦は非効率」のくだりは語弊がありました。ただ、どっちにしても4.7点だったらGOEで稼いだ方が早そうです。はい。

浅田選手も4回転習得しても、3Aと置き換えることはしないでしょうから同じように、もう少し基礎点上がります。ただ非効率には違いありません。

ただ、浅田選手は現在SPでもFSでも、3回転で一番基礎点が高いルッツを一回も跳んでいないのは、どうしても不利に働くと思うので、これは文句無いルッツを習得してもらって、バリエーションを増やせたら最高ですね。

もちろん、あくまで現行の採点基準、システムが続くなら、であって、3Aの基礎点がもっともっと高くなれば不要かもしれないですけどね。



最後に、やはり採点基準の見直しがあるようですね。「回転不足に中間点を」なんていうのを見ましたが、ちょっと方向性が違うような・・。確かに回転不足になるリスクの軽減というのは大事ですけど、

Triple Lutz + Triple Toeloop 基礎点10.00
Triple Axel + Double Toeloop 基礎点9.50

こういうところも含めて、本当に難しいジャンプが高得点になるような基礎点の大幅見直し、をして欲しいです。