山手線の内回りと外回り

ちょっとまえのことだが、テレビでこんなことを言っていた。その内容は、視聴者投稿(という体)で紹介されたのだが、「山手線の内回りと外回りで運賃が同じなのはおかしいんじゃないか!?」というものだった。
番組の詳しい内容はあまり覚えてないが、これを受けて出演者の芸人は「なるほど〜」みたいなリアクションを取っていた。芸人として、出演者としてはまあ、こういったリアクションをとらざるを得ないのだろうから、それは置いておくとして私自身は直感的に「何がおかしいのか?」と思った。

この投稿の趣旨は要するに「仮に山手線を1週したとして、外回りは内回りより距離が長くなる。だったら距離の長い外回りの方が運賃が高くないとおかしい!」というものだろう。

ここで、私自身はJRの料金の決め方や山手線の構造を熟知していない。調べるのもめんどくさいので調べていない。それをことわったうえで続けさせてもらうと、まず、JRの運賃が基本的に距離で決まっているのはおそらく正しい。あと、内回り、外回りというのが言葉どおりの構造(内回りの外をぐるっと外回りが囲んでいる)であれば、外回りの方が内回りよりも距離が長いのも正しい。

しかし、「だったら同じ料金はおかしい」は正しくない。いちいち言うまでのことでもないが、距離で運賃が決まっているといったって、1m単位で決まっているわけではない。詳しいことは前述のとおり知らないが、常識で考えてある程度の刻みで区切っているのであろう。自分が列車に乗った経験からも、「降りる駅が違ったって運賃が同じ」というのはよくあることだ。

いや、言いたいのはこんなことではないのだ。「距離が違っても運賃が一緒」というのが、おかしいことではないというのもあるが、そもそも私が直感的に感じたことというのは「そんなに距離に差は無いだろう」ということだった。

依然、どこかで聞いた話が印象に残っている。授業で先生が話してくれたのか、どっかのインターネットのサイトで見た話か、出所は定かではない。

今、地球の赤道に沿って、ながーいロープを地球に1周まきつける。次に、地上から1mの高さで同じことを行う。この二本のロープの長さを比べたらどれほどの差があるだろうか。
というものだ。

この話を聞いた当時、地球規模の大きさなら相当な長さの違いがあるだろう、と思ったものである。

ところが、計算をしてみると直感とは大きく異なる結果となった。

最初のケースのロープの長さは、地球の円周に等しいので、「地球の直径×円周率(3.14とする)」である。
次に1mの高さで巻いたロープの長さは「(地球の直径+2m)×3.14」である。
この両式の差を取ると残るのは「2m×3.14」であり、ロープの長さの差はわずか6mあまりということになる。

結局、元の円周の長さには関係がないのだ。

これを山手線で考えてみる。実際の山手線は、きれいに内回りの線路の外側を等間隔で外回りの線路が囲っているわけではないと推測される。近い部分もあれば遠い部分もあるのではないかと思う。仮に平均20m離れていると仮定(かなり適当に設定した)すると、1周の距離の差は「20m×2×3.14」で120mあまりである。20m離れていると仮定してもこの程度の差なのである。実際にどれほどの違いがあるかは分からないが、「料金に差が出て当然」というほどの距離差は無いと思われる。

内より外が長い、というのはまぎれもない真実だが、その差は、となると思ったより無いものだ。