パラドックス13

パラドックス13

パラドックス13

面白かった。ページ数は多いが、全く感じさせない。極限状態であぶりだされるそれぞれの価値観。
どういう結末で終わらせるのか、ずっと予想しながら読んだが、よめず。結果的には「彼」の言っていることが正しかったことになるが、読んでいる最中も自分ならどうするか、考えた。

これは完全にSFのお話である。科学的な説明も少しあるが、基本的に「現象」を受け入れるところまでは理屈を考えてはいけない。というのも、同じ東野作品「ダイイング・アイ」で、謎に対する論理的・科学的な結論を期待したばっかりに、がっかりした経験があるから。

でもこの作品は、最初からSF全開の展開であったためにそういった点は気にならず、展開される物語に没頭できたのが良かった。

前回読んだ「赤い糸」といい、最近、東野圭吾さんの作品に以前ほど面白さを感じられなくなっていたが、これは彼の著作の中でも5本の指に入る作品だと思う。

あえて言うなら、誠哉は常に冷静で合理的だったが、あまりにも徹しすぎていて、現実感がない感じがしてしまったのが少し残念か。